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最近、日本版CCRCという言葉を見聞きすることがありませんか?

CCRC(Continuing Care Retierment Community)とは「継続介護付きリタイアメントコミュニティ」のことで、主にアメリカでは定着しているコミュニティの形態であり、高齢者が自立して生活できるうちに入居して社会活動に参加し、介護が必要になった場合も医療を受けながら暮らし続ける仕組みとの事だそうです。

では、このCCRCの日本版とはどんなことが構想されているのでしょうか?

政府の日本版CCRC構想有識者会議が報告している「日本版CCRC構想(素案)」の冒頭には、日本版CCRC構想が目指すものとして以下のように記されています。

日本版CCRC構想は、「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指すものである。本構想の意義としては、①高齢者の希望の実現、②地方へのひとの流れの推進、③東京圏の高齢化問題への対応、の3つの点があげられる。

正直言ってあさはかな筆者などは、提言としてはもっともな内容だけど実際的な促進策という点ではハードルが高いのかな…と考えてしまいました(それは筆者が誤解をしていただけに他ならないのですが…)。

しかし、いろいろと興味を持って関連情報を調べてみると、なるほどこれは奥が深いと気付かされます。考え方や展開次第で広がりが無限大とでも言えるくらいに可能性を秘めているものだと本気で感じるようになってくるのです。

つまり…

日本版CCRCは単に高齢者を看護・介護できるような画一的なシステムをその地に確保するというものでは決してありません。都市部であっても、その近郊、郊外、地方や過疎地であっても、その地域や環境などの特徴にマッチするような包括的なコミュニティを融合させ、更にあらゆる資源を有効に繋いでいくことで広がりを持たせ、地域活性化に結びつけていくということに希望を感じさせるものなのです。

鍵となるのは、建物の有効利用

既に国策として地方創生を掲げている背景もあって同施策に積極体な自治体が複数出てきており、その後の中間報告では正式名称を「生涯活躍のまち」として地方自治体に積極的な取組みを促しているようです。当然、このような取り組みには実務を担うであろう民間企業や医療・社会福祉法人、NPOなどの積極体な参加が不可欠ですが、既にそれらの動きも活発化してきているようです。現在運営されている事例を見ても都市再開発型や郊外の空団地を全面改装しキー施設にするものの他、保養地のようなところから過疎化の進んだ地方のまちでも状況に応じた取り組みが見られます。

これまで有効利用が見いだされなかった既存の公営住宅や公共施設、廃校となった学校校舎なども有用な資源となり得ます。そして、人が増えればそこには様々な交流や仕事や知恵などが創出され、相乗効果で地域がまるごと活性化しますから、それらによって増え続ける高齢者の健康寿命をも延ばすことが期待できると同時に無理なく均整の取れた地域包括支援の環境も整えられることに繋がるわけです。

日本中のあちこちで日本版CCRCが展開され、それを契機にまちが活性化され、環境や観光資源、特産品や逸話などがそれぞれ見直されて発信され、その地を訪れたり物を購入したり、最終的にはその地に終の棲家をもとめて移住することが期待できます。

 

ここまで考えるとただの高齢化社会を見越した施策だけではなく、企業でも個人でもあらゆる世代の人々が注目し、それぞれが参画していくような社会のムーブメントが想像されますね。是非、今後の展開に注目していきたいものです。

photo by SUUMOジャーナル

“住宅版 ゆりかごから墓場まで” 理想郷を目指すまちづくりが進行中 [SUUMOジャーナル]

 

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すがはら

埼玉県に生まれ在住。建設業に20年以上に亘り従事。都市土木・インフラ整備、再開発事業等に携わる。特に近年は時代要請でもある社会基盤の維持、保全事業に思いを寄せ傾注、現在に至る。全国各地を奔走し、生の声が反映される保全事業に日々取り組んでいる。

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