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当協会では東京都市大学の濱本教授とともに軍艦島の建築物の調査を行っています。2015年9月16・17日に濱本教授と学生たちとともに軍艦島に上陸しました。

今回は16~20・30・31・65・70号棟を対象に、ウェアラブルカメラやドローンを用いて部材の損傷確認や建物の傾きなど調査することが目的です。

私にとっては2回目の上陸になります。前回は雨で思うように調査が進みませんでしたので、今回もどうなることかと心配しながら長崎に向かいました。

軍艦島へは、長崎市の野母崎漁港から漁船に乗って数十分で到着します。朝、漁港に到着するや否や雨が強く降り出しましたが、軍艦島にわたると曇りに変わり、調査は順調に進みました。

今回担当したのは、30、31号棟と16〜19、70号棟の一部で、建物の中に入って柱・梁を一つ一つウェアラブルカメラで撮影し、その損傷の度合いを確認しました。30号棟は国内最古のRC造集合住宅であり、いつ崩れてもおかしくないという風貌です。柱・梁は手が入るほどのひび割れがあり、コンクリートが崩れ落ちて床に散乱しているところや床が抜け落ちているところが何か所もあり、気の抜けない現場でした。

天気が良くなった時を見計らって、ドローンを飛ばすことができました。軍艦島のような調査対象物が大きい所や人の目が行き届かない所の調査では、ドローンの本領が発揮されます。上空から撮影した軍艦島を見ると如何に建物が密集しているかがよくわかります。また、建物はそれぞれ通路や階段でつながれており、まるで立体的な迷路のようです。

軍艦島の建築物群が建設されだしておよそ100年になります。鉄骨造のものは朽ちて崩れてしまっていますが、鉄筋コンクリート造のものは、損傷のわりに崩壊せずに建ち続けています。これは、地震に見舞われていないことも大きな要因ですが、台風や潮風にさらされてここまでかたちをとどめていることはとても興味深い点です。

軍艦島は、2015年7月に世界文化遺産に登録されましたが、その対象は島を取り巻く護岸や明治時代に作られた竪坑などで、建築群はそれに含まれていません。軍艦島のシルエットを形成する建物の中には、国内最古や国内最高層などの非常に価値が高く、特色に富んだ建物が多く存在するため、この結果を少し残念に思いました。

今後、これらの建築物群がどのように評価され、保存されるのか注目したいと思います。

(執筆:太田善輝)

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