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バブルが弾けて以降、日本の不動産市場を活性化するために、中古不動産の評価システムが見直され、海外の投資家向けに建物のエンジニアリング・レポート(ER)が鑑定業務の中に導入されていきました。

中古不動産の市場について言うと、アメリカ不動産の方が日本よりも成熟していることを認めざるを得ません。

では日本と欧州・欧米とでは不動産事業にどんな違いがあるのでしょうか。

 

「一生に一度のマイホーム」vs「7回は住み替えるライフスタイル」

ヨーロッパなどでも築100年以上の建物がいまだに普通に用いられていることは、海外の物件を見た方であればよくご存知でしょう。欧州・欧米においては、建物を定期的に修繕して人が使える状態のものであるという評価がなされることにより、資産価値が維持されます。

日本人の場合は、「一生に一度のマイホーム」という言葉が耳に馴染みがあるように、一つの住まいに長く住み続けると言う概念が浸透しています。

しかし、例えばアメリカ人の多くは、一生のうちに平均で7回ほど住宅を買い換えるという統計が出ています。住んでいる自分の物件の修繕を行い、価値を上げた状態で売却し、ライフスタイルに合わせて次の物件に住み替えていきます。

新築よりも中古住宅の方が人気があるのは、前のオーナーがどのようにその建物をメンテナンスしてきたかということにより、価値が増し加わることもあるからと言えます。

 

アメリカでは320万円、日本ではゼロ円!?

例えば土地+建物で合計400万円の中古物件があるとしましょう。日本の場合は、建物は資産としては評価されず、ほぼ全額が土地に対する費用ということになります。

しかしアメリカの場合、80%は建物で、20%が土地という考え方になります。

日本の建物は「消費財」という認識が強く、スクラップ&ビルドの文化が浸透しております。その理由は、戦後に短期間で大量の住宅を建築しなければいけなかったという歴史的・社会的背景があり、「質より量」の建物構造が貧弱な建物が多く供給されてきたことにあります。

日本では、超寿命で、耐久性の高い、世代を超えて使われるような建物はマイナーなものとなりました。むしろ、いかに安く建物を作るか、ということが評価されていきました。

アメリカの場合は、建築物は立派な資産として認識されていますので、より耐久性の高い建築となるとともに、その資産の価値を減らさないという認識が浸透しています。

 

中古でも建物別に資産価値を評価して!

住宅の文化に反映されているように、日本の建築物に対する見方は欧州・欧米とは大きく異なり、建物に対する資産価値を評価するというスタンスがそもそも備わっていないように思えます。

それゆえに、日本では減価償却年数が経過した時点で建物の評価価値はゼロになってしまうのです。

ところが、その建物の構造や仕様をよく見てみれば、その後にあと何十年も使えるものもあれば、すぐにでも取り壊したいようなものまで、千差万別。

そのどちらの物件も中古不動産として同評価というのは、誰が考えても「なぜ?」となるものです。

日本ではようやくエンジニアリング・レポートなどによる中古建築物の第三者的な評価が意識されるようになりました。

しかし、これではまだまだ中古物件市場の活性化には程遠く、良質の建物が生き延びることができません。利用者のために安全・安心に普通以上にこだわった建物を作ったとしても、単に法律をクリアすれば良いだけの構造仕様で作った建物と同じ評価額になってしまうからです。

 

日本が「先進国」であるという意識を保つためには、中古不動産の扱いに対する認識や制度をもっと改革していかなければならないでしょう。

鍵を握るのは、耐震補強とリノベーション技術を掛け合わせて良い建物を長く使うために建物の投資価値評価を行う「建築レトロフィット」というわけです。

 

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