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昨今、不動産物件の売買に伴ってエンジニアリングレポート(ER)が実施されるようになりました。

かつて日本では、建物の売買においてそのようなレポートを作成する必要はなく、いわば自由に取引がなされていたようですが、なぜ今日ではそのような制度が利用されるようになったのでしょうか。

 

不動産市場の活性化

バブル崩壊後、国内の不動産市場は長期間低迷しました。多くの方が物件購入に躊躇してしまうようになったんですね。

当時、国内の企業は元気がなかったために、不動産の証券化による流動性の向上が図られました。

そうして市場回復のきっかけとなったのが、外資系の投資ファンドや投資銀行による積極的な購買行動です。

 

外資系企業が物件を入念に調査

それまでの「自由な取引」、つまり「良さそうに見える物件」を購買対象にしていたバブル時代の日本企業と異なり、外資系企業は投資対象とする不動産について入念な調査を行った上で意思決定を行うのが習慣でした。

外資系企業は、購入時に「適正手続」としてデューデリジェンス(DD:Due Diligence)を必須とし、主に3つの側面における調査レポートを求めたのです。

  • リーガルレポート(法的状況):弁護士が調査作成
  • アプレイザルレポート(経済的状況):不動産鑑定士・公認会計士が調査作成
  • エンジニアリングレポート(物理的状況):一級建築士が調査作成

これらのレポートは相互に関連して利用されるのですが、こうしたデューデリジェンスは証券化手続きにおけるスタンダードとなり、今日では典型的な証券化スキームにおける出発点になりました。

 

エンジニアリングレポートが投資判断の参考に

そうした流れに沿って不動産鑑定評価基準が改定され、証券化対象不動産についてはエンジニアリングレポートを作成してこれに基づいて評価を行うことが義務づけされるようになりました。

証券化される可能性のある一定規模の不動産についての取引にはデューデリジェンスを行い、特に物理的調査の結果をエンジニアリングレポートとしてまとめて投資判断の参考とすることが必須になっていったそうです。

建物が長期的に利用されるためには、現状の物理的状態についてしっかりと把握し、長持ちさせるための改修や修繕を実施していく必要があります。

その建物を素人がつぶさに見てまわって評価することはできませんから、第三者にエンジニアリングレポートを作成してもらって物件の良し悪しを判断するというのは、とても筋が通った話のように思えます。

 

スクラップ&ビルドから、ストック&リノベーションへと日本の不動産業界が注目するビジネスにおいて、とても大切な制度なんですね。

 

参考
一般社団法人レトロフィットジャパン協会 – ②エンジニアリング・レポート(ER)
株式会社アースアプレイザル – エンジニアリングレポートの仕組みと役割について
不動産オーナー経営学院REIBS – エンジニアリングレポート(ER)の活用方法
JSCA – 『地震-6』- 地震リスクと予想最大損失率(PML)

 

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