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「ホームインスペクション」(建物状況調査・住宅診断)の活用を促すことを目的とした改正宅建業法が成立しました。

ところでこの「ホームインスペクション」とは一体どういうものなのかをご存知でしょうか?

また、今回の改正宅建業法によって誰がどんな影響を受けるのでしょうか?

 

ホームインスペクションとは?

買主としては物件を安心して買えるかどうかの判断材料として、その建物を専門家の目で客観的に診断してもらい、その結果を知りたいと思うかもしれません。

ホームインスペクションとはシンプルに表現すると、その中古の建物を専門家が診断し、結果を報告するというもの。

中古住宅の取り引きにおける売買契約の前に行われる重要事項の一つとして、宅建業者は今後、ホームインスペクションが実施されていれば報告し、なければインスペクション業者を斡旋する、ということになります。

同時に宅建業者は、中古住宅の取り引きを行う売主に対してインスペクション業者を斡旋できることが求められます。

ホームインスペクションの実施が義務化されているわけではなく、売主が拒否する場合もあることでしょう。その場合、建物診断ができませんので買主側に対するアピールが難しくなり、売買の成約に至らないということになります。

そのためには宅建業者から売主に対して啓蒙活動をしていくことが必要かもしれません。

ちなみにインスペクションを行うのは国が実施する講習を受けた「既存在宅状況調査技術者」の資格を持つ建築士となります。

 

どうしてこのような制度が制定されたのか?

こうした法改正によって、中古住宅の質の向上し、中古物件の売買取引でのトラブルを軽減することが期待されます。

住宅の量が充足し、中古住宅の需要に着目されつつある現在、「悪い物件」を買わされてしまうのではないかと恐れて中古住宅の購入を消費者が躊躇してしまうことを防ぐために第三者の評価を導入している、と考えるとわかりやすいかもしれません。

住宅インスペクションの診断内容は、国土交通省が発表している「既存在宅インスペクション・ガイドライン」を見るとわかります。

主には、構造耐力に不安のあるもの(腐食、蟻害、腐朽、ひび割れ、欠損)や雨漏り、水漏れの発生の可能性や配管や設備が日常生活に支障を及ぼすほどに劣化しているものなどを診断するようになっており、あくまでも目視で可能なものに限定されているようです。

もしもインスペクションで確認できないような大きな欠陥が後ほど発覚した場合は保証費用を保険で賄えるように保険への加入なども促されていて、購入後のトラブル防止にさらに踏み込んだ、と言えるかもしれません。

さらに保険に入るためには住宅が保険に加入できる条件であるかを見極めるために診断を行わなければならないため、住宅インスペクションをすることには副次的な意味合いもあります。

 

4月から具体的にはどうなるのか

先にも述べた通り、4月からは中古在宅の取り引き時に「インスペクションを行った経歴」または「今後インスペクションを実施する予定はあるのか」という点を仲介業者は買い手に伝えなければならなくなります。

ポイントは、インスペクションは必ず行わなければならない、というところまで義務化はされていない点。ここは要注意ですね。

 

ビルオーナーも住宅同様に……?

さて、この制度は基本的には個人世帯の住宅(戸建て、マンション)を想定していますが、テナントビルなどのオーナーも、こうした制度の変化に追従していくことが求められてくると考えた方が良いでしょう。

商業ビルのオーナーだからこの制度はあまり関係がない、ということではなく、中古物件の残存価値を第三者的に示せるようにという要求は、建物の買い手の意識次第になっていくかもしれません。

「耐震診断」はまさにそれに該当すると言えるかもしれません。少なくともビルの安全性について第三者が示すことになりま「診断結果に対する需要が集中する」状態になりつつあります。

ビルの耐震診断、戸建やマンションの住宅インスペクションと、中古物件に対する見方は大きく変わってきています。

 

鍵は買い手?

建物を購入して利用しようとする際に、これからは「この中古物件の状態は?」という確認がますます当たり前になり、その物件の魅力を単なる外観や立地だけではなく、強度や安全性、修繕の必要性の有無などに感じられるようになります。

言い換えれば、中古物件の質を向上させる牽引役となるのは、対応する側の売り手ではなく、要求する側の買い手になると言えるかもしれません。

「この物件は診断をしていません」と述べて物件を取引する現場は、当面は増えていくかもしれません。しかし、利用者が建物そのものの価値を定量的に判断し、多方面から建物の魅力を考えるようになることは、国内の建築業界に大きな流れを生み出すことでしょう。

今回のインスペクション制度導入を機に、所有する建物の価値を上げるという時流に自ら乗っていく事をビルオーナーにおすすめしたいですね。

 

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